休学日誌#16東京奇行編⑤「女神的幻想:思考と夢想の礎、あるいは幼年器官との接触」

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ローマ展に行ってきた

2023年9月16日から12月10日まで東京都美術館で開催されている「永遠の都ローマ展」に行ってきた。

ローマのカピトリーノ美術館のが所蔵するおよそ70点の美術品が展示されている。

おおよそ3000年前に作られたとは思えない美術品の数々に圧倒された。

特に印象的だったのは彫刻の”柔らかさ”だ。彫刻に柔らかいという表現を使うのは変だけれど本当に柔らかく見えるのだ。

彫刻品の多くは大理石やブロンズといった素材から作られていると美術の授業で習った。この展覧会に展示されている彫刻品も当然”硬い素材”で作られている。しかし、柔らかく感じるのだ。

彫刻の表情や仕草がこの奇妙な二面性の原因だと私は分析する。

手のひらサイズの小さな彫刻、2mを超す大きな大彫刻、手首、足、頭。大小形状様々な彫刻達は、皆総じて動きを持っていた。流線的で流れのあるマイナス、今にも何かを語りだしそうな巨像の頭。動作の一部を切り出したのではなく連続したアクションを彫刻というフィルムに記録したような動きのある仕草や表情を皆持っている。

ただ、この最終情報に至るまでのプロセスを私の言葉足らずな表現で言語化することが難しい。

視覚が脳に出力する情報は(確かに)「素材」と「表情・仕草」。この2情報を脳電気回路が複雑怪奇な演算をしてその結果「硬」と「柔」という矛盾する奇妙な出力をするという感じだろうか

そういうことを考え出すと私の小さな頭はパンクしてしまうからここらでやめておこう。

この「硬」「柔」の融合の極。彫刻とは思えない彫刻。

の究極系が「カピトリーノのヴィーナス」だった。チラシでも”奇跡の初来日”とかいう文句で大々的に宣伝されているこの彫刻像はローマ神話に登場する愛と美の女神ヴィーナスを題材に作られた作品だ。

ヴィーナスを題材にした作品といえば、巨大な貝殻の上で裸の女の人が立っている「ヴィーナスの誕生」や現在は両腕が失われている「ミロのヴィーナス」とか有名なものがたくさんある。

ミロのヴィーナスは、古代文明とオカルトに夢中で雑誌ムーと吉村作治の本が愛読書だった幼少期の私が特に惹かれた題材のひとつで、欠損した両腕がどんなポーズをしていたのか想像しそれを絵に描いていた覚えがある。

「カピトリーノのヴィーナス」もヴィーナスの誕生やミロのヴィーナスと同じく裸体のヴィーナスをモチーフとした彫刻像だ。

裸の像なので当然体のラインがダイレクトに伝わる作品だ。素材は他と同じく硬そうな大理石。しかし「硬」「柔」そしてそれに加え流線型の体のしなやかさみたいなものがが本当によく表現されていた。まるで、本当の人間で型を取ったんじゃないかと思うほど写実的なのにどこか現実感を欠いた幻想的な像。

この像を最初に見たとき、陳腐な表現だけどまさに言葉を失った。いや(いい意味で)頭がからっぽになったという表現のほうがより適切だと思う。

展示会ではこの像を360度、どこからで見ることが出来るのだけれど鼻が高く端正な顔立ちとなめらかな体のラインどこをみても美しかった。

都庁

ローマ展を堪能したあとは都庁に行ってきた。ヨーロッパの大聖堂とゴシックなデザインが組み合わさった秀逸な建物だ。ビル上部には展望台もあり東京のビル群を見渡せる。

観光名所としても有名な都庁。私がここに訪れたのはもちろん観光という名目もあるのだけれど、一回はここへ来てみたいという思いがあったからにほかならない。

この都庁という場所は、中学時代の私に多大なる影響を与えた「FINALFANTASY XV」及び「FINAL FANTASY Versus XIII」(2つ合わせて以下”FFXV”)の舞台なのである。そっくりそのまま”FF東京に現る”というわけではないのだけれど、ほぼまんまなのは確かだ。

学校から帰るとFFXVをずっと遊んでいたし学校にいたとしても頭の中ではFFXVライクな妄想劇が繰り広げられていた。

つまり、中学時代の私は仮想東京都庁に暮らしていたとも言える。というか本当にそうなのだ。

当時に比べれば熱はさめたけれど、それでも、中学以降この日誌を綴る今この瞬間まで続く私の頭の中の一部を司り、中学時代をいい意味でも悪い意味でも中二的の染め上げたFFXVの舞台に立っていること。とてもとても感慨深いものがある。

今回東京に来て一番感動した瞬間である。

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