※この記事には、「対象年齢17歳以上(CERO:D)」程度の残虐表現が含まれます。
このゲームの持つ残虐性と儚さは、現代社会が抱える問題に一つの答えを導き出している
あらすじ
主人公「J.J.マクフィールド」とその恋人である「エミリー」が追憶島を訪れることから物語は始まる。仲睦まじくキャンプをする二人だったが、突如エミリーが姿を消してしまう。J.Jはエミリーを探し辺りを探索していくが突然の落雷による大火傷をおってしまう普通ならは死んでしまう大怪我だったが、エミリーを思う気持ち故か、J.Jは不死身の肉体と四肢が切断されたとしても一瞬にして体が回復するという超常的な力を身につける。かくして、エミリーを探すJ.Jの過酷な旅が幕を開けるのだった。
残虐さと儚さを兼ね備えたゲーム体験
今作をレビューする上で欠かせないのが四肢欠損や全身火傷といったゴア表現だ。これらのシステムは単なるビジュアルのためだけに用意されたものではなくゲームプレイひいてはシナリオに密接に関わってくる。
今作はオーソドックスな横スクロール+パズルというシンプルなゲームシステムを採用している。道中には様々なトラップやパズルが仕掛けられているのだが、プレイヤーは文字通り「手足」を使ってそれらを突破しなければならい。
プレイヤー自身の手でJ.Jを痛めつけることになるわけだが、当然、彼女は手足がもがれたり火傷を負ったりすると苦痛の叫びをあげたりのたうちまわったりする。
ボタンひとつで元通りにはなるものの、正常な人であればいたいげな少女がこのような目に遭うのを見たくはないはずだ。おのずとまるで自分の体かのようにのように慎重にJ.Jを操作することになる。こうした側面からプレイヤーと主人公を重ね合わせる手法は見事だった
しかし、この残虐さだけがこのゲームを形作っている訳では無い。
花畑や屋上などの印象的なロケーションの数々と奇妙な動物たち、そしてそれらを描き出すノスタルジックなグラフィックの合わせ技から生み出される世界観は素晴らしいの一言に尽きる。
特に印象的なロケーションの一つ「第一ゲヘナロック橋梁」
このどこか郷愁的で儚さすら感じる雰囲気と前述の残虐との差異がこの作品の持つ陰鬱さをさらに際立たせているようにも感じた。
趣のあるストーリーテリング
今作のシナリオの大部分はスマートフォンのSNSアプリを介しながら進行していく。
メッセージの内容は、「現在進行系で更新されていくメインシナリオ」と「J.J.の過去のメッセージ履歴を辿っていくサブシナリオ」の2つに分けられる。
メインシナリオは不気味でシリアスな展開の連続なのだが、サブシナリオはそれとは打って変わってコミカルな物が多く、独特の文体と合わさって荒んだ心を潤してくれる。
私が特に気に入っているF.K.とのやりとり
サブシナリオを閲覧するには収集要素の一つである主人公の好物ドーナツを集めてまわる必要がある。収集要素と聞くとあまりいいイメージを持っていない人が多いと思うのだが、数もそこまで多くなくクリア後でも集めることが可能なため一度取り逃したとしてもあまり気にしなくてもいい。
一方で、カクつきやフリーズなどの不安定さとゲームシステム的なマイナス要素がこれら上質なプレイ体験を損ねているのも事実だ。多少のカクツキならば多くのゲームにはつきもので特段に気にはならなかったが、フリーズによってそのタイミングで入手するはずのトロフィーがもらえなかった時には流石に落ち込んだ(後からチャプターセレクト機能をつかってトロフィーは取ることができた)。また、今作はオートセーブでしか進行を記録することができず、セーブタイミングによってはパズルやトラップを最初からやり直すことになる事もあった。パズルの難易度はあまり高くないのでそれほどストレスにはならないかも知れない。
The MISSING – J.J.マクフィールドと追憶島をプレイし終えて
私がクリアまでにかかった時間はおよそ七時間半ほどで決して長いとは言えない。しかしその中に濃縮されたJ.Jの痛みと再生の物語はけっして短く浅いものではなく、ゲームデザインとシナリオこのゲームを構成するすべてが一つの綺麗な線となってプレイヤーを導いてくれる。
エンディングを迎えた後”TheMISSING”というタイトルに込められたメッセージが重く心に響くはずだ。
もしこのゲームをプレイしようと思っているならこれだけは頭に入れておいてほしい
- ギャラリーは見るな
- 収集要素は気にするな
- 叩いて吸え
「The MISSING – J.J.マクフィールドと追憶島」は以下のサービスで配信されている。
- プレイステーション
- 任天堂
- XBOX