Obsidianで面倒くさがり屋のための読書メモ(果汁50%)を作る

この記事は先日投稿した「積本を消化するのに読書メモは必要だ。でもメモるのは面倒くさい」というひどい内容の記事の解決編だ。

「メモはしたいが、面倒くさい」この全く横暴な欲求をある程度満たせた「解決策」それがObsidianというアプリ。

このアプリについては、既にネット上にいろいろな記事が挙がっているので、詳しい説明はそちらに譲りたいと思うが、早く言えば、これはメモとメモをつなげることの出来るメモ沢山なアプリである。

長々と書くのもあれなので、早速に本題に入ろう。私のような読書メモを取りたいけど面倒くさい人の参考になれば幸いである。

目次

前準備 面倒の前借り

早速「読書メモ」を書き始めたいところだが、「面倒くささ」を出来るだけ排除するために、はじめにちょっとした前準備が必要だ。ObsidianをPCにインストールすることはもちろんだが、他にもいくつかやっておくべきことがある。

Hover Editorプラグインのインストール

Hover Editorプラグインは「面倒くさくない読書メモ」の核となるプラグイン。このプラグインを導入すれば、編集できるポップアップウィンドウを出現させることが出来る。

つまり、メモを取る煩わしさを解消してくれる。

実にめんどくさくない。

インストールした後、快適に使うためにいくつか設定をいじっておこう。

「設定 > コミュニティプラグイン > Hover Editor」と進み、設定画面最下部の

  • Initial popover width を “400” ( ホバーウィンドウの横の大きさ)
  • Initial popover height を “800” (ホバーウィンドウの縦の大きさ)
  • Hover Trigger Delay を “100” (ホバーウィンドウが出現するまでの時間)
  • Hover Close Delay を “100” (ホバーウィンドウが閉じるまでの時間)

ホバーウィンドウのサイズはお好みなのだが、400×800にすることで(私の13インチMacbookAirのディスプレイでは)最近のiPhoneの画面サイズと同等くらいになるのでちょうど良いサイズになる。

ホバーウィンドウのDelayに関しては、遅すぎてもメモのリズムを崩すし、早すぎても使いにくくなってしまうので私は”100ms”で落ち着いた。

テンプレートファイルの準備

私はObsidianに読書メモをつける時、一つの本・論文に対して一つのコアとなるテーブルノートいわゆるMOCを用意し、そこにメモを書きつけるようにしている。メモとソースのつながりを作っておくためだ。

「読書メモ」に関しては(いちいち挿入するのが面倒くさいので)テンプレートファイルは用意しない。しかし、テーブルの形がぐちゃぐちゃだと、後々メモを再探索したりする際に困るので、テーブル用途のノートには画一的なテンプレートファイルを用意するようにしている。

---
tags:
  - TABLE
Expansion:
---
## 目標
- @ 
## メモ
- 

詳しくは後述するが、テーブルを構成するのは「読書目標」と読書メモを箇条書きで作成する「メモ」の2項目。

”- – -“で囲われた部分は、いわゆるpropertyというやつで私はこの部分にこのノートがテーブルファイルであることを示す”#TABLE”タグを挿入している。また、読書メモに限らず私はタグでのファイルを使ったファイルの整理を(面倒くさいので)やらない。”Expansion”の項目には、次に読みたい本や気になった参考資料を書き留めるためのメモ欄である。

たぶん必ず一度は振り返る事ができるディレクトリの構成

最後に、ディレクトリの構成だが、これは各自のお気に入りがあるし「読書メモ」という範囲を超えてしまうので参考程度に乗せておく。

※Fが先頭についているのはフォルダ、ついていないのはノート

root/
├── {F}あるてま(取り組んでいる作業に必要なメモを保存しておくフォルダ)/
│   ├── 作業Aのテーブル
│   ├── 作業Bのテーブル
│   └── etc...
├── {F}ぶんけん(本、論文、etcのテーブル用ノートのみのフォルダ)/
│   ├── {F}本テーブルフォルダ/
│   │   ├── 本Aのテーブル
│   │   ├── 本Bのテーブル
│   │   └── etc...
│   └── {F}論文テーブルフォルダ/
│       ├── 資料Aのテーブル
│       ├── 資料Bのテーブル
│       └── etc...
├── {F}まてりあ(振り返ったメモを貯めるフォルダ)
├── 新規メモ
├── 新規メモ
├── 新規メモ
└── etc...

読書メモに限らずメモを作ったあと、そっくりそのまま箱にしまい込んでしまっては、そのメモがまた新鮮な空気を吸う事ができる可能性はおよそ10%以下だ。エビングハウスの忘却曲線よろしく振り返る事が大事である。しかし、紙のメモと違って物理的な形がないデジタルメモはその振り返りをシステム的に行わなければ再開の機会は殆どないと言っていいだろう。しかし、何かしらのタイマーを設定して振り返るのは面倒くさい。

そこで、私が編み出したのが「トリハダ振り返り法」である。つまりは、

こういうことである。新規ファイルの格納場所を”root直下(Obsidianのデフォルト)”から、”あえて”変更しないことで、”あえて”ファイルを散乱させるのだ。

普段フォルダによるファイルの整理整頓を心がけている人ならば目を覆いたくなるほどの醜悪な光景。一刻も早くこの邪悪を取り除きたい、つまり、ノートをフォルダに移動したい。そしてここに、この瞬間に、図らずしも(?)”振り返り”が発生するわけだ。

特に、普段エクスプローラを閉じているあなた、サイドバーが表示されない「新規ウィンドウ」で作業しているあなた、それでいてめんどくさがり屋なあなた、つまり私のなのだが、大体3〜4日ほどで簡易的な地獄が生成される。

しかし、これまで義務でやっていた振り返りが生理的な衝動に変わり、それでいて、振り返りが終わった後は一種の清涼感も味わえる。

我ながらうまい方法だと思う。

ルール シンプルに読む

メモにルールなんぞ作っても「メモ」の速記と拡張的性格を邪魔するだけと思う方もいるかも知れないが、これは「面倒くさくしないためのシンプルなルール」であるので、おひとつご覧になっていただきたい

  • メモのための読書は、それだけで良い読書ではありえない
  • 整理していて楽しい部分だけ整理する
  • 一枚のメモは”出来るだけ”一つの事柄でまとめる
  • すべてをObsidianで完結させようとしない

この4つのルールを、私は守って読書メモを作るようにしている。見たまんまではあるが一応ひとつひとつ解説しよう。

メモのための読書は、それだけで良い読書ではありえない

読書メモを読書に導入すると、「書き出し」の魔力に取り憑かれ「読書体験を豊かに拡張するメモ」でなく「メモを作るための読書」をしてしまうことが往々にしてある。しかし、内容を書き出すための読書というのは全くもってつまらない。

英単語の意味を調べるときだって、一度にすべての意味やイディオムを吸収出来る人はそういない。その時の必要な分を理解してその次か次ぐらいにそれが定着したころにようやく、リラックスして他の部分がクリアに見えることはよくあることだろう。

本も同じだ。小説ならまだしも、学術書や参考書の内容を一度サラッと読んだだけで覚える事ができる人はエスパーか何かである。とりあえず普通ではない。

だから、まずは、すべてを頭にいれるという野心は持たず、読むことに集中し読書メモは二の次ぐらいに考えたほうが気が楽である。「今、その本を読むことで得たい小さな目標」を立てるのも自分を見失わない良い方法だ(テンプレートの目標はそのためのものである)。

整理して楽しい部分だけ整理する

載っている内容のすべてに最大限の興味と集中が注ぐ事ができる本というのはなかなか無い。

「本を読み終えても一寸たりとも理解できない」あるいは「あまり集中出来ない」箇所というのがというのは、そもそも「自分が今持っている興味関心とズレている」あるいは「自分がまだそのレベルに達していない」ということの証拠である。そういう部分を苦労してまとめても、結局頭に残らない。

ならば、読むだけ読んで、整理する際はそんな部分は飛ばしてしまえば良い。その分の時間を読んでいて整理して楽しい箇所に回すほうが効率的だ。

しかし、どこもかしこも飛ばしてしまっては意味がないので、事前に本についてリサーチすることも大切だ。

一枚のメモは”出来るだけ”一つの事柄でまとめる

「一つのメモに一つの事柄」というのはObsidianというか、その根源にあるZettelkastenの哲学であるが私の場合「出来るだけ」という文言が載っているのがミソである。

一つの事柄を一つのメモにまとめようとしてもどうしてもうまい具合にいかない事がある。そういう時は、面倒くさいからとりあえずメモにありったけを書き出してしまって、後の「振り返り」の時に内容を分ければよい、そして大抵の場合、復習のタイミングではすっきりうまくまとまるものである。

究極的に言えば、私のマイルールの中ではダイイングメッセージであっても、そのソースが明記されてあれば(たとえ、◯ページ「かゆい うま」でも)メモとして成立しているわけだ。

すべてをObsidianで完結させようとしない

様々なハードやソフトがところ狭しと並ぶ現代において、私達が陥りがちなのが「一つのものに集約」することである。もちろん、自分でも何がなんだかわからなくなるほど様々なものを導入するのは(それはそれで面白いが)あまり効率的とは言えない。しかし、「集約」に凝りすぎて「何が何でも一つにまとめてしまう」というのも(これもこれで面白いが)考えものだ。

つまり、Obsidianを導入した後、Obsidianでしかメモを取れないように自らを縛り付ける必要はない。書き込める資料ならばそれに書き込んでも良いし、コピー紙でもいい、チラシの裏もクールな存在だ。

何処にメモを書いたとしても”最終的に”それをObsidianに格納すればよいのだから、読書と同時にObsidianを立ち上げなくともよいわけである。

メモ 面倒くさくない

では、以上の点を踏まえ、実際に読書メモを取っていこう。全体の流れとしてはこうだ。

  1. 区切りの良いところまで読む
    • 書き込める本:線を引く、あるいは進行上必要な文だけをメモする
    • 書き込めない本:設定した目標に対して、とっても重要だと思う部分だけ「紙」ににメモする。
  2. 読み終わった後に傍線やメモだけを辿ってメモを書く

まず「読む」と「(整理して)書く」ことは必ず分ける。人間2つの事を同時に出来るほど器用ではない。「読む」際にはObsidianには一切目もくれずに読む事に集中、「書く」際には、「読む」で残されたメモや傍線を頼りに「情報の整理」を行う。つまり、Obsidianが登場するのは後半の「整理書」だけ

読む

さて、まず読む前に「その本で自分が得る事」つまり「読書の目標」を決めておこう。
あまり難しく考えすぎず、シンプルに「その本を手に取った理由」を書けば良い

目標が決まったら楽しく読もう。それが一番だ

また「読む」際に、書き込める本であればが傍線を書いておくと、後々整理して「書く」時の自分用インデックスになるので気になるところはマーキングしておこう。

さらに、傍線に一手間を加えると尚の事良い。

このように傍線にちょこっと付け足すだけで

  • 傍線 -> 読み安いようにただ引いただけの棒
  • ☆の傍線 -> 結論やその他重要な事に対する目印の棒
  • ◯の傍線 -> 読書目標とは関係ないがビビッときたこと

という3通りのインデックスを生成することが出来る。

Obsidianを使って内容を整理するときには、まず「☆の傍線」部分だけに目を通し、その部分を軸として「ただの傍線」を肉付けに使うと時短にもなるし、何よりメモが組み立てやすくなる。

書く

切りの良いところまで読み終わったら、早速、本題のObsidianにメモを取ろう

STEP

テーブルを作る。

新しいノートを作成し先程作ったテンプレートファイルを挿入する。

ファイルの題名(H1)には本の題名を入れておく、テーブルファイルであるということがひと目でわかるように”{T}題名”としておくのが良いだろう。

手順が前後してしまったが、”目標”見出しには、自分の読む前に決めた自分の読書目標を書き込んでおく。(青いハイライトは”List Callouts”というコミュニティプラグインによるもの、箇条書きを簡単にハイライトすることが出来るので便利。)

 

STEP

メモを作る。

バックリンクを作る要領で「新しいメモ」を [[新しいメモ]]  のように囲む。

※メモの題名は「ポップアップウィンドウ上部の題名部分(写真では”NewNote”の部分)」をクリックすれば、後から簡単に変更できるので、決まらなければ内容と関係のない適当な名前でも良い。

リンクを作成した後、Macであれば”⌘”を押しながらそのメモにカーソルをあわせると、

新しいメモをのファイルを作成するポップアップが開くので、ポップアップの真中のボタンを押してファイルを作成する。

STEP

メモに書き込む

ファイルを作成すると以下のような表示に切り替わるので、本の内容を整理して書き込もう。

内容を整理する際には、前述の通り

  1. 該当箇所の「☆の傍線」に目を通しメモの核とする。
  2. ただの傍線を引いた内容はその肉付けに使う。

とすると整理しやすいし、また☆傍線以外に頭を割かなくて良いので面倒くさくない

もちろん、まとまらなければざっくりと書き出して「振り返り」のときに後回ししても良い。

STEP

メモを量産する

一つのメモが出来上がったら、もっとメモろう。

しかし、このままではポップアップウィンドウが邪魔だ。そんな時はポップアップウィンドウの青いバーを持って適当な一までドラッグしよう。

そうして、メモを重ねていくと

という風にHover Editorプラグインを使用することで、Obsidianでは紙メモを量産する感覚をデジタル上で再現する出来る。

紙メモは物理的にソースと紐づけが出来ないので散らばってしまうが、Obsidian であればテーブルページを通して紐づけができたまま個別のメモとして扱えるので管理が楽ちん。

このポップアップは表示されているウィンドウ(今回ならば「{T}ももたろう」)を閉じるか、右上の x を押すまで画面上に表示され続けるので、日をおいて読書を再開しても、ウィンドウさえ消していなければ前回までの思考をたどることも可能だ。

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